メジャー先発2登板目、現地4日のアスレチックス戦で初勝利を挙げたアストロズ今井達也投手。結果以上に米球界で話題を呼んでいるのが、本人すら完全には説明しきれない“魔球”スライダーだ。結論から言うと、今井の武器は「曲げ方の上手さ」ではなく、曲がり方が一定ではない点にある。だからこそ打者は狙い球を絞れず、捕手ですら時にミットを外される。

メジャー初勝利の立役者は”予測不能”の変化球
アストロズの今井達也投手が、現地4月4日のアスレチックス戦でメジャー初勝利を飾った。先発2登板目での快挙だが、それ以上に米球界で話題を集めているのが、今井投手の投げる”魔球”スライダーだ。
米スポーツサイト『The Sporting News』は「正反対の方向に変化している」と驚きをもって報じた。通常のスライダーはグラブ側へ滑るように変化するが、今井のスライダーはそれだけではない。腕側に曲がり落ちるパターン、縦に変化するパターンなど、どの方向に変化するか予測不能という常識外れの球種なのだ。

「UFOスライダー」誕生の秘密
アストロズ今井達也の魔球スライダーに注目せよ——その正体について、今井投手本人はこう語っている。
「鴻江理論と出合って投球フォームが定まって臨んだ2024年のシーズン途中に『あれ?』と。スライダーを投げるとやたら捕手がミスするようになって」
転機は敵チームの打者からの一言だった。「今井さんのスライダーはどっちに曲がるか分からない」。この言葉で、自身の球が特殊な変化をしていることに気づいたという。
興味深いのは、今井投手自身も投げ分けているわけではないという点だ。セットポジションでの立ち方や重心のかけ方のわずかな違いが、不規則な曲がりを生み出している。投球フォームの完全再現は理想だが、人間はロボットではない。そのズレが生んだ”投げミス”が、結果的に打者を翻弄する魔球へと昇華した。
「ミスがミスじゃなくなった」——今井投手はそう表現する。

鴻江(こうのえ)理論とは?
「鴻江理論」とは、アスリートコンサルタントの鴻江寿治氏が提唱する身体理論。
人間の体の特徴を「うで体(猫背型)」と「あし体(反り腰型)」の2つのタイプに分類し、それぞれの個性に合わせた身体の使い方を導き出すもの。
この理論は、骨盤の開き方の左右差や重心の位置といった先天的な体のクセに基づいています。自分のタイプを正しく知ることで、スポーツにおけるパフォーマンスの向上や、怪我の防止、日常生活での身体の負担軽減につながるとされている。
活用シーンと実績
トップアスリートの指導: 野球(WBC日本代表など)、ソフトボール、ゴルフ、バレーボールなど、多岐にわたる競技のトップ選手がこの理論を取り入れています。
製品開発: デサントから発売されている「コウノエベルト」シリーズは、この理論に基づいて骨盤や関節のバランスを整えるために開発されました。
健康増進: 一般の方に向けた姿勢改善や、コミュニケーションの円滑化(相手との体の使い方の違いを理解する)にも応用されています。

不時着する変化球「UFOスライダー」
本人ですらどの方向に曲がるか、落ちるか分からない。この神出鬼没な変化球を、今井投手は「UFOスライダー」と命名した。不時着するUFOのように、どこに到達するか予測できないという意味が込められている。今井投手はこのロゴが入ったTシャツを愛用しているほどだ。
従来の変化球は、投手が意図した方向に変化させるもの。しかしUFOスライダーは、その概念を根本から覆す。打者はもちろん、捕手でさえ捕球に苦労するほどの予測不能さは、まさに”魔球”と呼ぶにふさわしい。

次回登板はマリナーズ戦、2連勝なるか
今井投手の次回先発は、現地10日午後6時40分のマリナーズ戦。(日本時間11日午前10時40分)。UFOスライダーの正体は徐々に知られるようになったが、攻略法はいまだ不明だ。
対戦相手は当然、映像とデータで変化傾向を洗い出してくる。ただし攻略の難しさは、球種そのものより“分布”にある。曲がり方が複数パターンに散るなら、打者は一点読みを捨てるしかない。狙いを広げれば振りは遅れ、狙いを絞れば外れる。今井の魔球スライダーが試合の主導権を握る展開は、当面続きそうだ。——次の登板が待ち遠しい。
